神奈川県相模原市 2008年11月 計算・作成: (有)A tempo
平成20年6月に国交省(国土交通省)により長期修繕計画標準様式・作成ガイドラインが示されました。
この度、これに倣って計算ソフトを改修しました。
マンション管理センター(2008年7月23日)も参考にしていますが、少しの改良を加えました。
標準を示されたことは、「設備設計一級建築士」の創設に比較すると、未曾有(う)に大変有意義で、高レベルな品質・ご労作に大変感謝しています。
一見標準化しにくく見える領域に手を入れられた事は、マンション管理行政に対する意気込みを感じさせます。
国交省ガイドライン:様式第4−2号による 長期修繕計画案 シミュレーショングラフ
均等積立方式
12期〜30年間をシミュレーションしています。
この様式の特徴は、
1.工事項目の内訳を
積み上げ縦棒で表現していますが、年度別の棒の内訳が、工事項目の分け方の数が多い割りに縮尺が小さく判別が困難
■ 工事項目ごとの内訳については、今まで私は別のグラフを使っていました。
参考グラフとして、引き続き採用しようと思います。
■ 上のグラフは標準グラフよりも縦方向を出来るだけ引き伸ばしています。
横軸の表示に苦労しました。
■ 凡例も見やすく改良しています。
2.推定修繕工事費
累計を折れ線グラフで表示している
■ 今まで使っていた棒グラフ表示も捨てがたいのですが、
均等積立方式に限定すれば、標準様式で良しとします。
国交省ガイドライン:様式第4−1号による 長期修繕計画総括表
工事項目・データーは、分かり易くする為に実際のものとは変えており、ダミーです。
計算対象マンションは、192戸で、昨年
大規模修繕工事を終えた築12年目です。
紫の
■部分が、修繕積立金額改正案A(@円/m2・月)の入力部分です。ここを変更すると、グラフが
リアルタイムで描き替えられます。
大規模修繕工事などの過去の
修繕工事履歴を、スムーズに計算に取り込むための工夫がソフト上重要となります。
この他の様式も改良しながら取り入れました。
作成費用は、1棟あたり 30万円 + 2,000円 *(X戸−60戸) としています。
60戸まで一律: 30万円 160戸: 50万円 260戸: 70万円
となります。
建物劣化診断・アンケート調査は別途ですが、実態視察を行ない、現実的な長期修繕計画とします。
管理組合への説明/さまざまなパターンの提示/総会議決への協力を含みます。30戸以下は、ご相談に応じさせていただきます。
3 ガイドラインの利用方法
長期修繕計画の作成者(分譲事業者及び管理組合)は、本ガイドラインを参考として、長期修繕計画を作成し、これに基づいて修繕積立金の額の設定を行います。
新築マンションにおいて、分譲事業者は、本ガイドラインを参考として、長期修繕計画(案)を作成し、これに基づいて修繕積立金(修繕積立基金を含む。)の額の設定を行います。これらに関しては、購入予定者に説明を行うことが必要です。また、作成した長期修繕計画(案)は「推定修繕工事費内訳書」を含めて管理組合に引き渡すこと、及び総会(設立総会)において議決を行う場合に協力することが望まれます。
購入予定者は、提示された長期修繕計画(案)の内容について、本ガイドラインを参考としてチェックすることができます。
既存マンションにおいて、管理組合は、長期修繕計画の見直し及びこれに基づく修繕積立金の額の設定に関する業務を専門家に委託(管理委託契約に含める場合を含む。)する際に、本ガイドラインを参考として依頼します。また、作成された長期修繕計画の内容を、本ガイドラインを参考としてチェックすることができます。
長期修繕計画の見直し等の業務を受託した専門家は、その成果物に関して管理組合に説明を行うことが必要です。また、総会における議決に協力することが望まれます。
長期修繕計画作成ガイドライン 及び同コメント より
竣工図面と既存の長期修繕計画書か、新築時の見積書(金額抜きの
数量表)の存在が前提条件ですが、無い場合はご相談下さい。
● 排水管は、修繕積立金を使う更新工事は現実的でない(特に専有部分)ため、
専有・共用管共排水管更生工事のみとしています。
● 給水管は、20年で専有部分のライニング更生工事、
35年で共用部分の更新工事としています。
専有部分の更新工事は、区分所有者負担。
● 長期修繕計画の見直しは、大規模修繕工事の周期にマッチさせる為、
6年周期としています。
● 給水加圧ポンプは、6年目でオーバーホール、12年目で更新と推定する。
・・・揚水ポンプより劣化スピードが速く、16年もつとは考えにくい。
ガイドラインでは一般の給水ポンプで、8年・16年としています。
実際は、その時点での劣化診断により将来決定することですが。
3 長期修繕計画の作成及び修繕積立金の額の設定の条件
三 設計図書等の保管
管理組合は、分譲事業者から交付された設計図書、数量計算書等のほか、計画修繕工事の設計図書、点検報告書等の修繕等の履歴情報を整理し、区分所有者等の求めがあれば閲覧できる状態で保管することが必要です。なお、設計図書等は、紛失、損傷等を防ぐために、電子ファイルにより保管することが望まれます。
長期修繕計画作成ガイドライン 及び同コメント より
賃貸マンションもオーナーさんも、把握されることをお勧めします。
◆修繕積立金の積立方法は、一般的に次のものがありますが、標準様式においては、将来の負担の増加が「
段階増額積立方式」と比べて少ない「
均等積立方式」により修繕積立金の額を算定することになっています。
@
均等積立方式:計画作成時に長期修繕計画の期間中の積立金の額が均等となるように設定する方式
A
段階増額積立方式:当初の積立額を抑え、5年程度ごとに段階的に増額する方式
第2節 修繕積立金の額の設定方法
1.修繕積立金の積立方法
修繕積立金の積立ては、長期修繕計画の作成時点において、計画期間に積み立てる修繕積立金の額を均等にする積立方式(以下「均等積立方式」という。)を基本とします。
なお、均等積立方式による場合でも5年程度ごとの計画の見直しにより、計画期間の推定修繕工事費の累計額の増加に伴って必要とする修繕積立金の額が増加しますので留意が必要です。また、計画期間に積み立てる修繕積立金の額を段階的に増額する積立方式とする場合は、計画の見直しにより、計画の作成当初において推定した増加の額からさらに増加しますので特に留意が必要です。
分譲事業者は購入予定者に対して、また、専門家は業務を依頼された管理組合に対して、修繕積立金の積立方法について十分に説明することが必要です。
第3編 長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント より
下のグラフは、段階増額積立方式とする計算方式を(
様式第5号)修繕積立金の額の設定 に追加してシミュレーションした場合のグラフです。
● 現行があまりに低額で、
急激な積立金UPを避けたい場合
● 現行が高い場合、安くなる改正案を強調しようとする時
に効果・説得力があります。
均等積立方式に固執すると、現状に比べ急激な修繕積立金の増額を招き、
合意形成が困難になる可能性があります。
5年程度に1度の見直しを前提にするならば、当面10年〜15年先に赤字とならないように積立金額を設定することで十分とする考え方もあろうかと思います。
段階増額積立方式によるシミュレーショングラフ
凡例部分です。
国交省ガイドラインに忠実に且つ
発展させていることをご理解いただけると思います。
管理会社が基幹業務の契約に含まれるものとして作成する場合、
危惧される事は、
● 管理会社が提案する金額は、色々な事情があるでしょうが、急激に高くなってしまう可能性はないでしょうか?
● 管理会社が受注予定の分野が予算多めに設定されていませんか。
適正な修繕積立金で合意形成を図ることは、とても重要なことです。
関連記事:
長期修繕計画の見直し業務 長期修繕計画作成上の注意点 マンションの長期修繕計画2 マンションの長期修繕計画 設備設計一級建築士になろうかな関連情報:◆
長期修繕計画の見直し及び修繕積立金の額の設定の手順 ◆
長期修繕計画作成業務発注仕様書(例) ◆
マンションすまい・る債 ご応募いただける管理組合 住宅金融支援機構
マンション標準管理規約 コメント 長期修繕関連
第32条関係
(1) 建物を長期にわたって良好に維持・管理していくためには、一定の年数の経過ごとに計画的に修繕を行っていくことが必要であり、その対象となる建物の部分、修繕時期、必要となる費用等について、あらかじめ長期修繕計画として定め、区分所有者の間で合意しておくことは、円滑な修繕の実施のために重要である。
(2) 長期修繕計画の内容としては次のようなものが最低限必要である。
1 計画期間が25年程度以上であること。なお、新築時においては、計画期間を30年程度にすると、修繕のために必要な工事をほぼ網羅できることとなる。
2 計画修繕の対象となる工事として外壁補修、屋上防水、給排水管取替え、窓及び玄開扉等の開口部の改良等が掲げられ、各部位ごとに修繕周期、工事金額等が定められているものであること。
3 全体の工事全額が定められたものであること。
また、長期修繕計画の内容については定期的な(おおむね5年程度ごとに)見直しをすることが必要である。
(3) 長期修繕計画の作成又は変更及び修繕工事の実施の前提として、劣化診断(建物診断)を管理組合として併せて行う必要がある。
(4) 長期修繕計画の作成又は変更に要する経費及び長期修繕計画の作成等のための劣化診断(建物診断)に要する経費の充当については、管理組合の財産状態等に応じて管理費又は修繕積立金のどちらからでもできる。
ただし、修繕工事の前提としての劣化診断(建物診断)に要する経費の充当については、修繕工事の一環としての経費であることから、原則として修繕積立金から取り崩すこととなる。
(5) 管理組合が管理すべき設計図書は、適正化法第103条に基づいて宅地建物取引業者から交付される竣工時の付近見取図、配置図、仕様書(仕上げ表を含む。)、各階平面図、2面以上の立面図、断面図又は矩計図、基礎伏図、小屋伏図、構造詳細図及び構造計算書である。ただし、同条は、適正化法の施行(平成13年8月1日)前に建設工事が完了した建物の分譲については適用されてないこととなっており、これに該当するマンションには上述の図書が交付されていない場合もある。
他方、建物の修繕に有用な書類としては、上述以外の設計関係書類(数量調書、竣工地積測量図等)、特定行政庁関係書類(建築確認通知書、日影協定書等)、消防関係書類、機械関係設備施設の関係書類、売買契約書関係書類等がある。
このような各マンションの実態に応じて、具体的な図書を規約に記載することが望ましい。
(6) 修繕等の履歴情報とは、大規模修繕工事、計画修繕工事及び設備改修工事等の修繕の時期、箇所、費用及び工事施工者等や、設備の保守点検、建築基準法第12条第1項及び第2項の特殊建築物等の定期調査報告及び建築設備(昇降機を含む。)の定期検査報告、消防法第8条の2の2の防火対象物定期点検報告等の法定点検など、維持管理の情報であり、整理して後に参照できるよう管理しておくことが今後の修繕等を適切に実施するために有効な情報である。
(7) 建替え等により消滅する管理組合は、管理費や修繕積立金等の残余財産を清算する必要がある。なお、清算の方法については、各マンションの実態に応じて規定を整備しておくことが望ましい。
マンション管理標準指針 長期修繕計画関連コメント◆マンションの共用部分を適正に維持管理するためには、定期的、継続的に保守点
検を行うとともに、適時、適切な修繕工事を行う必要があります。
◆そのためには、長期的な修繕工事の計画を作成し、これに基づいて修繕工事を行
うこと、修繕工事に必要な費用を算出し、その修繕費用に充てるため各区分所有者
が負担する積立金の額を明らかにしておくことが重要です。
◆また、長期修繕計画を、建物・設備等の現状に即したものとするためには、あら
かじめ、建物・設備等について、建築士等の専門家に調査・診断を依頼して、修繕
工事等の履歴、経年に伴う劣化状況や社会情勢や生活様式の変化等に伴う区分所有
者からの改良の要望などの実態を把握しておくことが不可欠です。そして、それを
計画の作成又は見直しに反映することが必要です。
◆長期修繕計画の内容としては、基本的な事項である@計画期間、A修繕工事項目、
B修繕周期、C修繕工事費及びD収支計画の全ての項目について定めていることが
必要ですので、これを「標準的な対応」としています。
◆更に、社会的背景や生活様式の変化などに応じて、マンションの性能(省エネ、
バリアフリー、防犯等)を向上させるグレードアップ工事の項目についても計画に
入れることが望まれます。
・H16調査(長期修繕計画と実際の工事の実施状況)
外壁塗装工事の実施 ・計画(12.0年目) 実施(13.5年目) 実施誤差(0.8年)
屋上防水工事の実施 ・計画(13.0年目) 実施(14.4年目) 実施誤差(0.8年)
給水管工事の実施 ・計画(21.2年目) 実施(20.1年目) 実施誤差(1.2年)
排水管工事の実施 ・計画(26.8年目) 実施(20.8年目) 実施誤差(0.7年)
マンション管理適正化指針 二の5 長期修繕計画関連(5)長期修繕計画の策定及び見直し等
マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値の維持、向上を図るためには、適時適切な維持修繕を行うことが重要である。
特に、経年による劣化に対応するため、あらかじめ長期修繕計画を策定し、必要な修繕積立金を積み立てておくことが必要である。
長期修繕計画の策定及び見直しにあたっては、必要に応じ、マンション管理士等専門的知識を有する者の意見を求め、また、あらかじめ建物診断等を行って、その計画を適切なものとするよう配慮する必要がある。
長期修繕計画の実効除を碑保するためには、修繕内容、資金計画を明確に定め、それらを区分所有者等に十分周知させることが必要である。
管理組合は、維持修繕を円滑かつ適切に実施するため、設計に関する図書等を保管することが重要である。また、この図書等について、マンションの区分所有者等の求めに応じ適時閲覧できるように配慮することが望ましい。
なお、建築後相当の年数を経たマンションにおいては、長期修繕計画の検討を行う際には、建替えについても視野に入れて検討することが望ましい。建替えの検討にあたっては、その過程をマンションの区分所有者等に周知させるなど透明性に配慮しつつ、各区分所有者等の意向を十分把握し、合意形成を図りながら進めることが必要である。