区分所有法17条1項では、「形状又は効用の著しい変更を伴わない」場合を除外して特別決議による共用部分の変更を定めとしていますが、どのような変更が「形状又は効用の著しい変更を伴わない」変更に当たるかの判断が難しい訳で、並みの裁判長等では判断が困難な状況が考えられます。
あるマンションにて、防衛省予算による航空機の騒音を防止・軽減するための住宅防音工事に関連して、合意形成のトラブルが発生しています。これまで行政後援のマンション管理士無料相談会にて、何度かアドバイスして来ておりますが、解決には至っておりません。
以前の理事会では壁式コンクリート躯体に換気用スリーブ開口(150Φ)を開けても顕著な構造耐力性能上の低下は生じないとして、総会普通決議(1/2の賛成)により工事実施の承認を与えて、一部住戸(半分以下の住戸)では工事が完了しています。

これに対して一部区分所有者が壁式コンクリート躯体に換気用スリーブ開口を開けることは、構造耐力性能上の著しい低下が生じるので、換気用スリーブ開口を構造的に補強するとともに今後はサッシ改造による改良工事のみを許可しようとしています。
また、特別決議ではなく普通決議により承認した前理事長の責任を問おうとしています。
管理組合の合意形成に関連した過去の判例を探すと、3/4で合意手続きをした管理組合に対して、札幌地裁は「基地局の設置は所有者全員の合意必要」(札幌地裁2008年5月:http://www.gsn.jp/no92..htm)で、
・・・携帯電話基地局を分譲マンションに設置するには、民法の共有の原則(民法第251条(共有物の変更))に基づいて、区分所有者全員の合意が必要だとする判決を下し、基地局設置賃貸借契約の白紙撤回を求めています。
一方この原審に対する控訴審で携帯電話キャリア(ソフトバンク)は、基地局設置は特別決議は必要なく、過半数の賛成で十分と解釈するべきだと主張し、札幌高裁は「マンションの屋上携帯電話の基地局を設置する際に総会の普通決議で足りるとした事例」(札幌高裁2009年2月:http://www.kokusen.go.jp/hanrei/data/201208_1.html)で、
・・・普通決議で足りるとして、基地局設置賃貸借契約は有効としています。
法律が言葉足らずなのか人間の読解力に問題があるのか、憲法もそうですが法律は解釈次第のようです。この判例と今回の事例では、
1.基地局の設置における電磁波の有害性の程度が、明確に科学的に証明されていないことに比べて、スリーブ開口が躯体鉄筋を切断するという現象は明確である。
2.前回理事会と現理事会の利害は相反しない。つまり原告被告の関係ではない。
というところが異なっています。さあどのようにサポートしましょうか。
ラベル:マンション管理士