2011年03月24日

地震による住宅被害に対する瑕疵担保責任

今回の東北関東大震災の被害にあわれました皆様に心よりお見舞い申し上げます。
不幸にして、住み慣れた住宅を失われた方を含めて、地震による建物・住宅への被害にあわれた方もたくさん居られると思います。

建物が地震被害を受けた場合、地震保険への加入をしていれば、補修費用としての保険金が支給されますが、まだまだ加入率は低いのが現状です。マンションの火災保険オプションである地震保険では、主要構造部の損害額が、建物の時価の3%以上20%未満の損害(一部損)では、保険金支給率が相当低くなり保険料の高さの割にはあまり足しにはならないと言う状況もあります。

地震保険へ加入していない場合、瑕疵担保責任は問えないかと言うことになりますが、残念ながら瑕疵に対する保証書や請負契約約款には多くの場合大地震などの天災地変により生じた損害については、住宅供給会社の責任は免責される旨の条項が入っているはずです。

それでも何とかならないか・・・・・
以下の判例が参考になります。
神戸地方裁判所平成14年11月29日判決は、阪神淡路大震災が起因して不同沈下をしてしまった住宅について、「建物の設計・施工・監理に瑕疵があり、それを原因として、本件建物には震災を契機に、被害が発生又は拡大したことが認められる場合、震災の損害も賠償すべき責任がある。」として、工務店に対し、2855万円の賠償を命じました。

瑕疵とは経年劣化と異なり、引渡し時点で存在していた不具合のことを言いますが、地震のおかげで、今まで潜んでいた瑕疵が顕在化したとして、工務店等に責任を問うことも考えられるようです。

但し、損害賠償等をするには瑕疵が引渡し時点で存在していた事を裁判所に認めて貰わなければなりません。



判りやすい例で説明すると、

@津波に合うと放射性物質を放出する原子力発電所には、元々瑕疵が存在していたことを裁判所が認めるならば、避難を余儀なくされている周辺住民は、津波のおかげで、今まで潜んでいた瑕疵が顕在化したとして、T電力に瑕疵担保責任を問い、損害賠償請求することが考えられます。

A地震に合うと計画停電を実施する電力会社には、元々瑕疵が存在していたことを裁判所が認めるならば、停電を余儀なくされている消費者は、地震のおかげで、今まで潜んでいた瑕疵が顕在化したとして、T電力に瑕疵担保責任を問い、損害賠償請求することが考えられます。
福島第一原発2.jpg
元々という部分が重要です。

@において電力会社は、「津波は天災で想定外の規模であった」と主張し、周辺住民は、「津波に合っても放射性物質は放出しないとT電力は約束していた」と主張することになるのでしょうか。

Aにおいて電力会社は、「地震は天災で想定外の規模であった」と主張し、消費者は、「一方的に電力供給を停止することは消費者契約法に違反している」と主張することになるのでしょうか。T電力は、困るのであれば引っ越しする自由があるではないかと主張するかもしれません。

果たして判りやすい例だったでしょうか。心配です。

参考となる判例をもう一つ。
     >>>>>仙台高裁判決 平成12年10月25日(判例時報 1764号 82頁)
宮城県沖地震によって分譲住宅地に亀裂、地盤沈下が発生したことにつき宅地の売主である仙台市に瑕疵担保責任が認められた事例
10年に1回程度、震度5の地震が発生している地域なら、それに耐え得る宅地でなければ瑕疵があるとされた。一審では、震度は6だったと行政側が主張し想定外の天災だとして原告の請求を棄却したが、控訴審では、震度は5だったとして瑕疵担保責任が認められた。

津波波高.jpgこの論法を踏襲すると、仮にT電力が事前に想定した津波高さが5mだったとした時に、
@今回の津波高さが5mを超えるものであれば、設置を許可した行政の責任(許可基準の甘さ)の比重が増す方向
A今回の津波高さが5m以下のものであれば、T電力の未来が限りなく真っ暗になる方向
となりそうです。
従って、想定した津波高さは公表できない事になりそうです。



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posted by アテンポ at 15:24| Comment(3) | TrackBack(0) | 建築に安全・安心を! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
中村先生、ブログをいつも拝見させて頂いております。
今回の記事、大変興味深く勉強いたしました。「元々」瑕疵が存在していたかどうか?が問題なのですね。被害を受けた方々の全員が救済されることがないまでも、一条の光であることは間違いありません。判例も興味深く読みました。
ありがとうございます。
Posted by アテンポのファン at 2011年03月25日 14:49
中村先生、
先日コメントさせて頂いた者です。先生が引用されている判例を興味深く読みましたが、他に、内容が異なる同類の判決はありますでしょうか?ネット上を探してみたのですが、見当たりません。お忙しいところ申し訳ございませんが、ご教示頂ければ幸いです。
Posted by アテンポのファン at 2011年03月29日 18:40
同類の判例を本文下部に追加しました。
仙台地方裁判所昭和56年5月8日判決・判例時報1007号30頁(宮城県沖地震の際に、ブロック塀が倒壊して子供が死亡したという事件の判決)も参考になります。
Posted by アテンポ at 2011年04月01日 09:17
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